陳情第5号 「神奈川県最低賃金改定等についての陳情」に対する賛成討論


陳情第5号 「神奈川県最低賃金改定等についての陳情」について、委員長報告の趣旨了承に反対し、陳情を積極的に採択すべきという立場から、会派「民主みらい」を代表して討論を行います。

実は、私も総務建設常任委員会の委員として、陳情の審査に参加していました。しかし、どうも議論の方向が、一方に偏り勝ちであった感じがします。テーマは最低賃金です。企業側の言い分もあれば、労働者側の言い分もあります。

企業は、払うのはできるだけ少なく、労働者はできるだけ多くもらいたい。この部分だけ見れば、お互いの利害は一致しません。しかし、大事なことは、全体としての生産性が上がらなければ、企業も労働者もお互いの分け前は増えないということです。

これまで、大手企業は輸出で大きな利益を上げてきました。たった上位30社で、日本の輸出の半分を稼いでいたときもあったそうです。

一方、中小企業は下請け単価を削られ、また、労働者は非正規雇用という形で低賃金を強いられてきました。大手企業のみが空前の利益をあげ、大部分の中小企業や勤労者はその恩恵にあずかれなかったことから、「実感なき景気回復」といわれました。

また、最低賃金の決定にも経営側の主張が強く反映され続けた結果、いつしか憲法で保障された最低限度の生活を営むこともできない、生活保護以下の水準になってしまいました。

これでは、日本の将来はない。このままでは日本経済の地盤沈下が進むだけで、目前に迫った少子高齢社会を乗り切ることができないと判断した政府は、平成19年11月、最低賃金法を改正しました。

新しい最低賃金法は、全面改正された第9条(地域別最低賃金の原則)に「生活保護施策との整合性に配慮する」ことを明記し、また、民主党との修正協議で「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」という文言が追加されました。39年振りの抜本的な改正といわれるだけあって、これは画期的なことです。

これを受け、中央最低賃金審議会は各都道府県をAからDの4ランクにわけ、生活保護水準との乖離額に基づき引き上げ額を示すとともに、それでもまだ生活保護水準を下回っている都道府県については、乖離額を別途示し、原則として2年以内に解消することとし、引き上げ額が大幅となる本県のような場合は、3年程度でこれを解消することが望ましいという答申を、平成20年8月に提出しました。

今回の陳情、陳情者は連合神奈川という労働者団体ですが、陳情の内容は、国会で成立した改正最低賃金法とそれを受けた中央最低賃金審議会の答申に沿ったものであります。法律に基づき適切な対応をして欲しいという当然といえば当然、当たり前の陳情を、どうして愛川町議会は採択できないのでしょうか。

委員会では、「企業経営はとても厳しい」と経営者側の窮状を訴える意見も出されました。しかし、企業側が厳しい以上に、労働者の側も厳しく、この間の派遣切りなどの報道を見れば、非正規の労働者が悲惨な状況に追いやられていることも、事実であります。

いくら、事業の経営が苦しいからと言って、憲法で保障された最低限度の生活も営めないような安い賃金で労働者を雇い、酷使することは許されません。企業である以上、もっと経営努力をすべきです。

また、日本経済の在り方として考えても、企業が生産性の向上を目指さず、いつまでも労働者の安い賃金に依存した経営モデルを続けるのは決していい事ではありません。

政府は、こうした日本経済の現状に対して強い危機感をもっていて、それが今回の法改正によく現れていました。

つまり、単に最低賃金を引き上げてお仕舞いではなく、新たに「成長力底上げ戦略」を打ち出し、中小企業の生産性の向上とともに最低賃金を引き上げることを基本コンセプトとしました。最低賃金の引き上げは、中小企業に対する支援策とセットなのです。

具体的には、大企業による下請けイジメや理不尽な下請け単価の引き下げを防止するための仕組みを、経済産業省も一緒になって構築するなど、産業政策と雇用政策の一体的運用を目指すものとして、国会に提案されました。

そして、国会では、最低賃金の議論とともに、これからの日本の姿、少子高齢社会における産業経済のあり方についても踏み込んだ議論が行われたことは言うまでもありません。

過日行われた総務建設常任委員会では、こうした視点に立った議論が不十分だったことは、とても残念に思います。

なぜ、私が、法案を提出した政府自民党の代弁をし、改正の背景やその狙いについて説明しなければいけないのか、不思議な気分でした。

そして、最後の討論では、おもわず国務大臣の国会答弁を引用してしまいましたが、今回の陳情は、こうした法改正の流れをくむものです。連立与党の自民、公明に野党である民主も賛成して成立した法律です。推進こそすれ、それを阻む理由は何もありません。

最後に、経営者側、労働者側、それぞれの立場・利害にこだわるのではなく、議員として、議会として、もっと将来を見据えた大きな視点に立った政策判断を期待して、会派「民主みらい」の陳情に対する賛成討論、委員長報告の趣旨了承に対する反対討論といたします。