所得税法56条廃止に対する賛成討論


所得税法56 条廃止の意見書を国に提出することを求める請願に対して、会派「民主みらい」を代表し、賛成の立場から討論を行います。

所得税法56 条とは、中小零細業者を支えている家族従業員の働き分を必要経費として認めず、また、これを受け取った親族の所得にもしないという、制度です。

家族で事業をしていて、夫が事業主である場合、妻や子に払う給料が必要経費とならず、妻や子の所得にもならないという昔の家長制度のような大変不合理な法律です。

12月議会では、家族労働を認めてもらいたければ、青色申告にするという手もある。青色申告という制度があるのに、なぜ活用しないのか、理解できない。という意見もありました。 

それもひとつの考え方だと思いますが、今ここで問題になっているのは、青、白に関係なく、一人の労働者、一人の人格として、家族従業員を認めるべきか、否か、ということです。青色だから認める、白色だから認めないというのは、明らかに、これは差別です。

トヨタのクラウンや日産のシーマならいいけど、軽トラはだめというのと同じ、乗っている車で人を差別してはいけません。

税の申告にあたっては、自主納税制度が大原則であり、白色にするか、青色にするかの選択は、納税者の権利です。

本町の場合、青色1595件、白色951件で、白色の割合は37.4%です。

所得税法を読めば、おわかりいただけると思いますが、青色申告を定めた57条は、<事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例>と書いてあるように、あくまでも特例であり、基本的権利として認めているわけではありません。

しかも、青色という特例を認めてもらうためには「税務署長の承認」が必要になります。

また、実際の青色申告制度の運用においては、わずかな記帳の不備などを理由に、税務署長の一方的な判断でいつでも取り消すことができることから、税法の矛盾とも指摘されています。諸外国では、青色申告の例はありません。

また、12月議会では、こんな議論もありました。
条文を廃止するのではなく、56条に家族労働を正当に評価する条文を入れるなど、条文の手直しや不具合のあるところは修正していけばよいのではないか、と。

しかし、どうやって56条に家族労働を正当に評価する条文を入れることができるというのでしょうか。所得税法の条文をよく読んでいただきたいと思います。

56条というのは<必要経費>を定めた37条の例外規定です。
つまり、事業所得の計算において、すでに必要経費は37条で認められています。認められているのですが、56条で例外規定、すなわち特例を設けて、家族労働を必要経費として認めないとしているのです。

ですから、論理的に言っても、家族労働を正当に評価するためには、それを認めないとしたその特例の廃止、つまり56条の廃止しかないのです。この点をよくご理解いただきたいと思います。


さて、もうひとつの問題「租税負担回避」について、です。

委員会では、56条の規定を廃止してしまうと、所得分割の恣意性が介入し、税務処理上、支障を来たすのではないか。という意見もありました。

これに対して、東京地方税理士会の意見書は、「雇用関係が成立し、かつ相当な対価が支払われている限り、租税回避行為に該当する余地はない」と言い切っています。

また、家族労働を認めない、正当に評価しないことによって、「租税回避行為」を防止しようというのは、とんでもない筋違いの考え方です。

中には悪いことを考える人もいるかもしれないが、だからといって、家族労働に従事するすべての善良な納税者、市民の権利を認めないというのは、あきらかに行き過ぎです。

よくこんな法律がいままで存在していたと思います。
しかし、昔は、こういったことが平気で罷り通っていたそういう時代でした。

というのも、法律がつくられたのは、戦後間もないときであり、まだ、戦前の古い家族制度が続いていて、家族の独立した人格も認められず、また当然のことながら、家族の労働に対して給料を払うという慣行もありませんでした。

世の中も、つい昨日まで、<男女七歳にして席を同じうせず>の時代でした。

そういう時代に、「家族構成員の間に、所得を分割して、税負担の軽減を図ることを防止する」ためにつくられたのが、この所得税法56条です。

ところが当時と、時代は大きく変わりました。

今日では、家族の中においても、一人一人の独立した人格・人権がはっきりと認められています。

もし、所得税法56条のような法律を、家族に給料を払うことは一切罷りならんといった法律を、もし、いま政府が国会に提案したら、どうなると思いますか?

ぜひ、皆さん、考えてみてください。
そして、もし、それが愛川町税条例の改正だったら、議員の皆さんは、どう判断されるでしょうか。

改正に賛成ですか、それとも改正に反対ですか?

今回提出された請願は、そうしたことも、私たちに問いかけているのだと私は思っています。

議員皆さんの賢明なるご判断を期待して、私の討論といたします。